民事に巻き込まれやすい
以前は鍵修理業者で働いていましたが、この職業というのは何かと民事トラブルに巻き込まれやすいようです。
たとえば、20代のころ、今日中に鍵を交換したいという電話がありました。
仕事なので、もちろんその依頼を受けることにして、指定された時間・場所にいくことにしました。
前の仕事で少し手間取ったため、約束の時間に指定されたアパートの一室に少し遅れてしまいました。
そのため、「鍵修理業者です。少し遅れてすみませんでした」と挨拶をしたのです。
そうしたら、中年の女性客が「静かにして」と口に人差し指を当てて言ってきました。
その中年の女性客は私をドアの中に引き寄せて、ベラベラと話を始めたのです。
要約すると、大家さんが合鍵を使って勝手に入ってくる不法侵入をするためノイローゼ気味とのことです。
そのため、大家さんが合鍵で入ってこないために鍵と錠を取り替えてほしいとのことでした。
一通りの事情を聞いたあとで、さっそく鍵を取り替えようと実施していきました。
鍵を取り替えるためには、どうしても玄関の扉を開けて体の半分を外に出してする必要があります。
大家さんと依頼者で言い争いに
鍵交換作業を始めて数分経った頃、突如として背後から老女の声が聞こえてきたのです。
「こんばんは。何をしているのですか」と尋ねられたのです。
とっさに私は「鍵交換をしています」と答えてしまいました。
その会話に気づいた依頼主の中年女性が話しに入ってきたのです。
そして、老女と中年女性が突如として激しく口論を始めたのです。
中年女性は老女に対して不法侵入者だと罵り、老女は中年女性に勝手に鍵を取り替えることを断っているのです。
どうやら、中年女性が言っていた大家さんというのは目の前にいる老女だったようです。
この2人の言い合いは5分くらい続いていきましたが、それ以上はわかりません。
2人が口論している間に私は鍵を元通りに戻してそそくさと帰っていったからです。
もしかしたら、1時間近く罵り合ってたかもしれません。
というのも、これ以上2人に関わっていたら民事トラブルに巻き込まれる可能性もあったからです。
確かに、中年女性の言うとおり大家さんが住居者に内密に部屋に入ることは違法かもしれません。
だからといって、大家さんに内緒にして鍵を取り替えてしまったら、こちらが訴えられる可能性だってあるのです。
裁判になったケースも
もしも、民事裁判に発展してしまったら、仮に裁判で勝てたとしても裁判にかかる労力は膨大なものなのです。
あまり民事的なトラブルに巻き込まれないように、距離を置くのが一番いいでしょう。
別の鍵修理業者の話を聞いてみると、夫婦喧嘩をしていた夫に依頼されて鍵を取り替えたら、妻から訴えられて損害賠償を支払うことになった同業者もいたようです。
鍵修理業者というのは、何かと民事トラブルに巻き込まれやすい職業なのだと、そのとき改めて実感させられることになったのです。
もしも、鍵修理業者にお世話になるときは、ぜひ民事トラブルに巻き込まないようにしてほしいと願っています。