なぜこの鍵修理の仕事をしたか

仕事を始めたきっかけ

この仕事を始めたきっかけは、まあ単純なことです。
就職活動をしていて、決まったのがそこだったから。

僕は今30代なんですが、僕が大学を卒業したくらいの年齢ってちょうど就職氷河期だったんですよね。今も不景気ですけど、今の学生は「就職が決まらなかったら院を目指す」とか「もう一年通う」とか、いろいろやるみたいですよね。僕たちの時代は、就職が決まっても決まらなくても、時期がきたら全員が大学を出なくちゃいけなかったんです。

そういうこともあって、僕は片っ端から入社試験を受けました。そして、その中で内定をもらえたのがこの企業。だから、鍵屋になったという感じです。
こう書くと悪いことなのかもしれないけど、あの時代は「これになりたい」と思ってなることができる時代じゃなかったから、僕みたいに流されるみたいに就職した人間もおおいんじゃないかな。鍵屋になりたかったからとか、そういう崇高なものはなかったです。

でも、入社してからいろいろ意識が変わりましたね。
最初は仕事を学んだり、現場も先輩と一緒に行ったりするんですが、どの現場に行ってもとにかくお客さんはこまっているんですよ。部屋の鍵があかない、スーツケースがあかない、どうしていいかわからないって。
そりゃ、僕だっていざ家の鍵がなくなったら焦りますから、それと同じような感覚なんでしょう。

でも、上司が鍵をあけてあげると、そういう人の顔がぱっと明るくなるんです。太陽みたいになるんです。
ほっとした顔で「ありがとう」って言われると、こっちもすごく嬉しくなって「もっと仕事覚えて頑張るぞ」みたいな気持ちになるんですよね。その気持ちで、つづけた感じかな。今は他に目標ができたんで、辞めましたけど。

学んだこと

でも、鍵屋で学んだことって大きかったと思います。
お金をもらってとはいえ、困った人を助けて喜んでもらうって言う仕事は楽しかった。もちろん嫌なこともありましたよ、「高い」って言われることもあったし「遅い」って言われることもあったし、仕事が重なった時はご飯を食べる暇すらなくて、大変でした。でも、それでも「ありがとう」って言われたらまた頑張れる。

そういう職場だったと思います。最初の動機は「就職先がないから」というものでしたが、今はあの仕事をしてほんとによかったとおもっているし、あの仕事の存在が今の目標にもつながっているので、良かったなと思います。なやむこともあったけど、まあ楽しいこともあったなという感じ。

鍵屋で学んだことは、今後の僕の人生にずっと続いていくんじゃないかって思いますよ。僕の人生にとっても、鍵屋で学んだことというのは本当に大きかったし、楽しかったです。