酔っぱらったおじいちゃん
職業によっては、いろんなハプニングに巻き込まれることがあるものです。
以前は鍵修理業者で働いていましたが、いろんなハプニングがありました。
鍵修理業者として板がついてきた25歳だった頃、深夜1時頃にお風呂に入っていたときに電話がかかってきました。
こんな時間に電話があるなんて不謹慎だと思う人も多いかもしれませんが、鍵修理業者にとっては当たり前のことです。
で、電話を取ると相手は交番勤務の警察官でした。
警察官が言うには「酔っ払ったおじいちゃんが、鍵をなくして家に入れないため開錠してくれないか」というものでした。
この時間帯である電話と言うのはほとんど、このように鍵を紛失した人の依頼が多いので何ら驚きもしませんでした。
警察からの相談だったため、快く了承して現地の住宅に向かうことにしました。
さっそく指定された住宅地に訪れてもそこには誰もいませんでした。
しばらく近所やグルグル回ってみたのですが、一向に高齢者らしき人だけでなく誰一人会うことができませんでした。
数分間玄関前に待っていましたが、そのままそこに突っ立っててもしょうがないため、電話のあった交番にいってみることにしました。
出向いたけれど…
駐在していた電話をくれたらしい警察官に「さきほどの電話をもらった鍵修理業者ですが、おじいちゃんは自宅にいなかったのですが」と尋ねてみました。
「さきほどはどうも。おじいちゃん自宅にいないのか」と困った顔をしていました。
そのあと、「でも、あのおじいちゃんは無銭飲食の常習犯だから開錠したとしてもお金は貰えないと思うけど」という予想外の言葉が返ってきました。
鍵修理業者の仕事には鍵を紛失した人のために鍵を開けるものがあります。
でも、それは慈善事業ではなく、自分の稼ぎのためにやっているのであってボランティア活動ではありません。
そのため、基本的に困っていても料金の支払いがない人の開錠をすることはありません。
もちろん今回も支払い能力がないのなら、依頼を受けなかったでしょう。
たぶん、その警察官も支払い能力がないことを先にいうと、依頼を断ることを知っていたのでしょう。
お風呂を途中で切り上げてきたのに、今回は全くの無駄足となってしまったのです。
警察官に「支払い能力がないことを知っていたのなら先に言えよ」と心の中で叫びましたが、口に出すことがありませんでした。
なぜならば、仕事柄警察官から依頼されることは一般の人が思う以上に多いのです。
大事なお得意様を不機嫌にさせないのも仕事のうちですから、渋々と帰っていきました。
このように、鍵修理業者として働いていたときは、不必要な出動をいくつも繰り返したことも幾度もありました。
こんなハプニングに出くわすのは、やはり鍵修理業者ならではと言えるでしょう。
もしも、鍵修理業者に依頼するときは、
きちんと待ち合わせ場所・時間を守ってあげてほしいと願っています。
結局、あのおじいちゃんはどこにいったのでしょう。