なぜこの鍵修理の仕事を辞めたか

仕事を辞めた理由

これはよく聞かれるんですけど、僕が鍵業者を辞めた理由は「カギを作る側に行きたいと思ったから」です。何て言うかな…鍵業者をやっていると、世の中の色々なことを見ちゃうところがあって。たとえば、ピッキング被害に遭った家の鍵交換もしたことあるんですけど、ああいう被害にあった人って本当にショックを受けるんですよね。当たり前なんですけど、本当に辛い思いをするんです。

僕が訪ねたのは初老のご夫婦でしたが、とにかくショックを受けていて「本当はもうこの家に住みたくない」と言っていました。持家だからしょうがないけど、もう嫌だって。

なんでも、夫婦で旅行に行っている間に泥棒に入られてしまったそうで、楽しい気持ちも台無しだとおっしゃっていました。確かにそうだと思います…家に帰ってきたとき、泥棒が入った痕跡があったらそれは辛い…。賃貸だったらすぐに引っ越しができるけど、持ち家だったらそうはいきません。そのことを考えたら、こうして悩まれる理由がすごくわかるんです。辛いよねって思うんです。

他にも、ピッキングされかけたお宅にお邪魔したこともあります。
若い女性の家でした。お気の毒に、本当に怯えていてこちらが気の毒になってしまうくらいでした。

これだけいろいろなものをみてきているのに、僕にできることと言えば「カギを変えること」です。
それだけなんです。はっきりいったら、それしかできない。それが辛くて、だったら「カギを作る方にいって、泥棒が入れないような鍵を作ってやる」と思って、仕事をやめました。
今は鍵を作る方に就職して、仕事をしています。

犯罪の怖さ

犯罪が怖いなんて当たり前なんですが、鍵のことを通して僕は「犯罪って本当に怖いんだな」ということを再確認したなって思ってます。特に、ピッキング被害なんて実際に見てしまうと「こんなに酷いんだ…」って思ってしまいます。それくらいのことです。

そういう事例をたくさんみていると、なんていうか…「カギ交換しかできない自分」が嫌になってくるんですよね。どうしても。なんだか人間不審みたいにもなってくるし。だから、犯罪を犯させない!という立場になりたくて仕事はやめました。

辞めたけど、結局は前にやっていたことが今の仕事のベースになっている感じなので、完全にやめたという話とは少し違うのかな。前の仕事場の人とも連絡し合って「お互い頑張ろう」と話し合いもしています。

これからは、頑丈な鍵を作る方の立場で世の中に貢献をしていきたい。心からそう思います。ほんとにね…一流の鍵職人になって、犯罪を減らすことに貢献ができたらいいなって、本当に思います。