暴力団排除条例と思い出

暴力団とのトラブルも

全国的に暴力団排除条例が施行されて、暴力団とかかわりを持つ企業・団体にはペナルティが課せられるようになりました。
これによって、今後の暴力団とのトラブルが激減することを期待します。
というのも、以前働いていた鍵修理業者では暴力団からの依頼が何度もあり、ときにはトラブルに発展する可能性もあったからです。

たとえば、鍵修理業者として働きはじめた20代前半の頃、暴力団と金銭トラブルに発展しそうになったのです。
ある日、電話がかかってきました。
ぶっきらぼうな話し方で、声の感じから中年男性らしいです。
「玄関の鍵を交換したいんだけど」という鍵交換の依頼の電話でした。
鍵交換の依頼はよくあることで、「防犯性の高い鍵に交換するということですね」と質問しました。
「まぁそんな感じかな。防犯シリンダーというのをよろしく頼む」という内容でした。

そのあと、鍵の種類や料金システムのこと、住所と時間をうかがっていきまいた。
そして、最後に依頼主が「その日、俺はいないけど、若い衆がいるから行けば分かるようにしておく」とぶっきらぼうに切りました。
『若い衆』というなかなか普段聞きつけない言葉を残して電話を切られてしまいましたが、経験の浅かった頃の私は何の不思議に思うことなく、当日決められた場所に足を運ぶことにしました。
場所は殺風景なマンションの一室です。
玄関からチンピラ風のお兄ちゃんが出てきたのです。
そのとき、初めて暴力団である可能性が脳裏に浮かんだのです。

現場に行ってみると

でも、その当時は暴力団排除条例も制定されていませんでしたし、依頼を受けたのですからプロとしてしっかりと仕事をしなくてはいけません。
そのため、退くことはせず不要な話をせずに黙々とシリンダー交換を済ませたのです。
室内にはあと2~4人ほどいるようです。
そのあと鍵を渡すのですが、その前に「料金は誰が支払ってくれるのでしょう」と質問しました。
その回答は「今持ち合わせがないから、後日に払う」とのことでした。
でも、電話では現金払いのみと言っておいたので、それでは話が通りません。
そのため、鍵を渡すことをせず、
「現金払いの約束だったため、支払いがないのなら、鍵(シリンダー)を元通りに戻させてもらいます」
と答えました。

鍵の取り替えができなかったら、チンピラ風のお兄ちゃんも親分に示しがつかないのでしょう。
渋々、現金で料金を払ってもらい、鍵を引き渡すことにしました。
鍵の取り替えに何十万とかかるわけがなく、チンピラといえども大人が4人もいれば、簡単に支払える料金なので、持ち合わせがないわけがありません。
少々怖い思いをして金銭トラブルに発展しそうでしたが、なんとか無事に仕事を終えることができました。
その後、鍵修理業者を辞めて、暴力団排除条例が施行されました。
暴力団に何らかの便宜をしたらいけないようですが、鍵修理業者も暴力団の鍵の取り替えは控えたほうがいいのか、ふと疑問に思ってしまいました。