トラブル
日本にはいろんな業界がありますが、それぞれ経験が浅いと何かとトラブルに巻き込まれてしまうものです。
たとえば、私は20代のころ鍵修理業者として働いていました。
働き始めた当初は何かとトラブルに巻き込まれそうになったものです。
たとえば、鍵修理業者として働き始めて2年後のことです。
19時頃になって同業者の鍵修理業者から電話が入ってきたのです。
「住宅の開錠依頼があったのだけど別の依頼が入っているのでこちらでは受けられない、だから変わりに受けてくれないか」という私への出動要請だったのです。
そのような理由ならいいだろうと、快く了承しましたがその後に
「電話相手が少しおかしいので気をつけて」
という奥歯に何か挟まったような言葉を残して電話が切られたのです。
でも、依頼を受けたのですから、さっそく同業者から聞いた連絡先に電話してみました。
そこは店舗か事務所みたいなところで「自分の家ではないけど、開けてほしい」という依頼だったのです。
他人の家を開ける
今までにないような依頼だったため詳しく事情を聞いてみると
「その住宅は借金を抱えて逃げている社長の家なのだ。所有権は自分たちにあるので開錠しても何ら問題はない」
ということでした。
あまりトラブルに巻き込まれたくありませんが、すでに同業者と了承した手前断ることもできませんでした。
民事事件に巻き込まれたくなかったため、念書に一筆書いてもらうことにして了承することにしました。
そして、開錠作業をするために依頼主が指定した一戸建て住宅へと足を運んでいきました。
すでにスーツ姿の営業マンらしき人がその住宅の玄関の前にうろうろと歩き回っていました。
「お待たせしました」とその営業マンに声をかけましたが、その営業マンは首をかしげていました。
どうやら、依頼主とは関係がないようです。
しばらくすると、別のスーツ姿の営業マンが訪れましたが、金ピカの腕時計やアクセサリーを身につけたまさに町金融といった装いでした。
電話口のイメージとは正反対ですが、こちらが依頼主のようでした。
この住宅の住民は2つの町金融からお金を借りていて、双方の金融業者が借金返済を求めて玄関前に鉢合わせしたのが、このシーンの全容だと状況を把握してしまいました。
そして、双方がお互いに罵倒し合いがはじまったのです。
その光景はまさに漫画やドラマで見ていたものを目の当たりにしたのです。
本来は依頼主のために開業作業をするべきですが、双方が罵倒し合っているなかでさらにトラブルに巻き込まれることが怖いため、その場をそそくさと逃げてしまいました。
念書にサインする前で良かったと今でもホッとしています。
ただ、トラブルに巻き込まれるかどうか、あらかじめ予測できなかったことはやはり私の未熟さがあったことが間違いありません。
鍵修理業者だった頃のこのような経験は今では懐かしい思い出であり、その経験を活かしてトラブルに巻き込まれないように心がけています。